第3回〈HMFは善玉か悪玉か?〉/「HMFと健康」全5回

善玉悪玉

※写真はイメージです。

 

 

「HMFと健康」全5回
第1回 HMFはどこにある?
第2回 メイラード反応とHMF
第3回 HMFは善玉か悪玉か?
第4回 くすりになったHMF
第5回 公開準備中

 

HMFは善玉か悪玉か?

 糖尿病は患者数最大の生活習慣病で、かつ万病のもとになっています。

 だから早期発見が大事です。

 

 そんな糖尿病の健康診断で一番気になるのが、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)というマーカー(目印)です。パームシュガーにとっても、このHbA1cを見逃すわけにはいきません。

 

 それは、血液中のHbA1cから、パームシュガーと同じヒドロキシメチルフルフラール(HMF)ができるというびっくり仰天のお話があるからです。

 HMFは善玉か悪玉か、誤解をなくすために正しい理解が必要です。

 

 

 ご存知のように、糖尿病予備軍では食後の血糖値が高くなっています。

 血糖とはグルコース(ブドウ糖)のことで、それが赤血球のへモグロビン(酸素を運ぶタンパク質)にくっつくとHbA1cができるのです。

 

 つまりHbA1cとは、高い濃度の血中グルコースとヘモグロビンが合体してできる糖タンパク質のことで、この値が高いと、様々な病気を引き起こす可能性があるのです。

 

 ではまず、HbA1cがHMFに変わる道筋について、試験管で実験してみましょう。

 糖尿病予備軍の赤血球を試験管に入れて、希塩酸を加えて煮ていると、なんとパームシュガーに含まれているのと同じHMFができてきます。

 

 実はこれと似た反応が、非常にゆっくりですが、ヒトの体内でも起こっていると考えられています。

 

 ヒトの赤血球は3ヶ月で寿命を迎えます。このときHbA1cは肝臓の酵素で分解されて元のアミノ酸に戻ります。そしてグルコースが結合していた部分から、HMFができてくるのです。

 HMFはできると直ぐに周りにあるアミノ酸と反応して、前回お話したメイラード反応産物(MRPs)へと変ります。

 

 

 ところで、体内で起こるメイラード反応のことを「糖化反応」と呼び、NHK「あさイチ」や「ごごラジ」、「たけしの家庭の医学」などのメディアでも、この糖化反応からできる物質を「糖化最終生成物(AGEs)」として取り上げています。

 

 しかしながら、このAGEsの発音がエイジングを連想させることに加え、放送では皮膚や血管の老化の原因物質として強調されたことなどから、糖化反応のすべてが“悪玉”として消費者に誤解されています。

 

 ところが、発表された論文をよく読んでみますと、放送内容が研究成果のごく一部だけを強調していることが解ります。

 悪玉は糖化反応のごく一部のみに限られており、HMFは悪玉には含まれず、もちろん“善玉”であることが解ります。

 

 繰り返しになりますが、糖尿病予備軍の血液中のHbA1cからできるHMFは決して悪者ではありません。

 ましてやパームシュガーに含まれているHMFは、カラメルの香りの主成分であり、食品添加物としても承認されている優れものです。

 

 HMFが善玉である確たる証拠として、アメリカで重症貧血を治療する副作用のない医薬品として承認されています。これについては次回に詳しく書くことといたします。

 

〈まとめ〉

❶ 糖尿病予備軍の血液中にはヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)という糖タンパク質が高濃度で存在し、これが様々な病気の引き金となる。

 

❷ HbA1cからパームシュガーに含まれているのと同じHMFが作られ、HMFはさらにアミノ酸と反応して、メイラード反応産物(MRPs)に変わる。

 

❸ 体内で起こるメイラード反応のことは「糖化反応」と呼び、この反応でできる物質のことを「糖化最終生成物(AGEs)」と呼ぶが、消費者の一部に、このAGEsが“悪玉”として誤解されている。

 

❹ しかしながら、ⅰ)❸は研究成果のごく一部だけを強調したものにすぎないこと、ⅱ)食品添加物として承認されていること、3)アメリカでは医薬品として承認されていることからも、HMFは我々にとっては「善玉」の物質である。

 

 

「HMFと健康」全5回
第1回 HMFはどこにある?
第2回 メイラード反応とHMF
第3回 HMFは善玉か悪玉か?
第4回 くすりになったHMF
第5回 公開準備中

 


 

岡教授

 

■岡 希太郎(おか きたろう)

1941年、東京都生まれ。東京薬科大学名誉教授。

東京大学薬学部博士号取得後、スタンフォード大学医学部客員研究員。日本の薬学教育に医療薬学を導入して、薬の正しい使い方を教授研究した。引退後は「コーヒーと健康」をライフワークとして予防医療を研鑽している。

 

著書に『珈琲一杯の薬理学』(医薬経済社)、『コーヒーの処方箋』(医薬経済社)、『カフェイン もうドーピングなどとはいわせない』(医薬経済社)、『医食同源のすすめ』(医薬経済社)、『毎日コーヒーを飲みなさい。』(集英社)、『珈琲一杯の元気』(医薬経済社)。